2016年08月01日
先週、ニュースを見ていて、最低賃金が24円上がることが決定したかのような報道のされ方で、びっくりしました。
「3%」「過去最大24円」と、威勢のいい見出しが躍っていて、町のスーパーの経営者に「パートの時給を24円も上げたらどうなりますか?」なんてインタビューしてみたり。。。
(東京の引き上げ目安は25円なのに)
最低賃金は次のような手順で決まります。
1.中央最低賃金審議会目安に関する小委員会が都道府県ランクごとの改定額の目安を示す。
2.中央最低賃金審議会が厚生労働大臣に改定額の目安を答申。
先週の動きはここまでです。
3.各都道府県ごとの地方最低賃金審議会で審議・答申
4.各都道府県労働局長が答申の要旨を公示、労働者・使用者からの異議申出を受付
5.各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定
毎年だいたい10月初旬に各地域の最低賃金が改定されます。
ちなみに、昨年平成27年度の目安の答申は、平均18円でした。
平成27年度地域別最低賃金額改定の目安について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000092874.html
ほとんどの地域は示された目安どおりか、高い額に決定しましたが、唯一神奈川県は目安19円に対して1円安い18円になりました。
愛知県は19円の目安に対して、1円高い20円の改訂幅に決定し、最低賃金は820円となりました。
つまり、最初に示された目安どおりには決まらないということです。
今年、愛知県は25円の目安ですが、果たしてどうなるでしょう?
厚生労働省:最低賃金制度
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/minimum/minimum-01.html
中央最低賃金審議会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-tingin.html?tid=127939
中央最低賃金審議会 (目安に関する小委員会)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-tingin.html?tid=127941
★参考までに、こちらもどうぞ
●愛知県の外国人雇用特区構想
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/310/
●派遣の休業補償を考える
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/307/
●被災従業員の休業補償を考える
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/305/
●派遣元の三六協定を確認しましょう
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/301/
●改正派遣法:義務?配慮義務?努力義務?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/298/
●労働者派遣法、政令?省令?指針?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/295/
2016年06月06日
愛知県の大村知事がぶち上げていた特区提案はどうなったでしょう?
第一段階の労働関係の特区提案は、
平成26年7月15日:モノづくり産業強靭化スーパー特区
この中に含まれています。
労働関係の項目は
1.外国人高度人材受け入れ規制緩和
・特区では10ポイント下駄を履かせよう!等
高度人材ポイント制とは
2.技能実習制度の規制緩和
・実習期間を3年から5年に延長
・技能実習終了後に5年在留許可
・一般製造工も受け入れやすくするように在留資格要件を緩和
3.新設企業や外国企業へ雇用ルールを紹介
4.ハローワーク事務を県に移管
以上の4点です。
なかなか採択されず、業を煮やして、これだけでもやってくれという提案が「外国人雇用特区」です。
平成27年11月24日:外国人雇用特区
新聞各紙にも取り上げられた挙句、実現したのは前の提案の3番
「愛知県雇用労働相談センターの設置」
だけでした。
その事業概要を引用します。
雇用労働相談センターは、国家戦略特別区域法に基づいて設置されるものです。新規開業直後の企業や海外からの進出企業等が、日本の雇用ルールを的確に理解し、個別労働関係紛争を生じることなく円滑に事業展開できるよう、各種相談サービスを提供します。
※雇用労働相談センターは、労使間で生じた個別労働関係紛争の解決を目的とするものではありません。
つまり、新設企業や外国企業のために厳しい日本の労働法制を緩めて事業を展開しやすくしようというのではなく、無知蒙昧の徒に現行の労働法制を教えてやろうという組織です。
ただし、権限は何も無いので、紛争処理の役には立ちません。
こんな施設、わざわざ愛知県内に1ヶ所作る必要があったのか?
すでに県内に14ヶ所もある監督署で事足りる話じゃないのか?
監督署は「署」だから、かなりの法的権限も持っているというのに。
「人手不足の製造業が、たくさん外国人にも働いてもらって、どんどん発展する」
そんな話はどこへ行ってしまったのでしょう。
地域限定で実験的に規制緩和して経済発展に寄与するはずの「特区」だったんじゃ?
手始めに3番からやりだしただけで、外国人雇用の規制緩和はこれから進むというのならいいんですが。
この組織、公式Facebookもあります。
https://www.facebook.com/aichi.elcc/
無料セミナー
・助成金受給の勘所
・知らないと損する労働法の基礎
もう、何をかいわんや。。。
★参考までに、こちらもどうぞ
●派遣の休業補償を考える
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/307/
●被災従業員の休業補償を考える
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/305/
●派遣元の三六協定を確認しましょう
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/301/
●改正派遣法:義務?配慮義務?努力義務?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/298/
●労働者派遣法、政令?省令?指針?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/295/
2016年05月16日
平成28年(2016年)熊本地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
厚生労働省:平成28年熊本地震に伴う派遣労働に関する労働相談Q&A
これを参考に
直接被災していないが、一時的に休業した派遣先で働く派遣労働者
について考えてみましょう。
問1-4 震災の間接の影響で休業しているが、派遣会社から休業中の賃金は支払えないと言われた。
震災の間接の影響で休業している派遣先に派遣されている派遣労働者の雇用主である派遣元は、間接の2乗であって、使用者の責によらない休業とは言えず、もちろん労基法第26条に基づき休業手当を支払う義務があります。
派遣会社は、派遣先の仕事が止まったら、派遣スタッフのために速やかに新しい派遣先を探してきて仕事をあてがいなさい、さもなくば休業手当を支払いなさい、という論理です。
問2-10 派遣先から労働者派遣契約の一時的な履行停止を申し込まれた場合、派遣元は派遣先に対して派遣料金や金銭補償を求められるか。
問3-2 派遣先から労働者派遣契約は中途解除しないが、派遣会社に一時的な履行停止を申し込みたい。
労働者派遣契約の中途解除については、派遣法第26条及び29条の2により、派遣先が休業手当を負担する等の措置義務があります(問2-9、3-1)が、「中途解除ではない一時的な休業」に関する派遣先と派遣元とのやり取りは「民事上の契約関係の話」でしかありません。
派遣先も納入先が全てを補填してくれるわけではないのでつらいところでしょうが、派遣会社は労基法という強行法規で休業手当の支払いを義務付けられているということをご理解ください。
この他にも
厚生労働省:平成28年熊本地震に伴う労働基準法等に関するQ&A
法テラス:平成28年(2016年)熊本地震に関するQ&A 労働関係一覧
といったQ&Aが充実してきました。
雇用保険関係の特例も拡充されていますので、最新情報をチェックしましょう。
影響を受けなかった地方の方も、どういう特例が発動するのか知っておいて損はありません。
厚生労働省:平成28年熊本地震関連情報
★参考までに、こちらもどうぞ
●被災従業員の休業補償を考える
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/305/
●派遣元の三六協定を確認しましょう
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/301/
●改正派遣法:義務?配慮義務?努力義務?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/298/
●労働者派遣法、政令?省令?指針?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/295/
2016年04月04日
新年度あけましたが、人事総務ご担当者の皆様、忙しい年度末を無事乗り越えられたでしょうか?
障害者雇用納付金の常用労働者数事前報告や一般事業主行動計画の届出など、企業規模によっては年度末までに新たに届出が必要になった書類がありましたが、間に合いましたか?
そんな中、多くの企業が4月1日から新年度のため、春闘と合わせて3月中に三六協定を結び、労働基準監督署に届出されたことと思います。三六協定は結ぶだけではダメで、監督署に届けて初めて効力を発揮する労使協定の一つです。
三六協定って?
三六協定の見直しが騒がれていますが、労働者派遣においては、現在でもご注意いただきたい問題があります。
それは、
1.派遣労働者の時間外労働は派遣元の三六協定に縛られる
2.労働時間管理は派遣先の責任なので、時間外労働の制限を超えて働かせると派遣先が罰せられる
という見過ごされがちな問題です。
労務管理がしっかりしていない派遣会社では、三六協定の締結自体がなされていない可能性もあります。そうなると、派遣労働者を1時間でも残業させただけでアウトです。
これは勿論、労働基準法第32条違反(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)となりますが、三六協定の時間を超えて残業させた場合も32条違反です。
三六協定を結んで届出していれば、その限度時間までは32条等の労働時間規制を免れるだけなので、超えてしまうと違反になるわけです。
大きな会社様では、各現場の指揮命令者が派遣労働者の残業時間を管理するため、イントラネットに各派遣会社の三六協定を掲示してあるところもあります。
お早めに派遣元の新年度の三六協定を確認されることをお勧めします。
★参考までに、こちらもどうぞ
●労働者派遣法、政令?省令?指針?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/295/
●改正派遣法:義務?配慮義務?努力義務?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/298/
2016年03月14日
法令に書かれている「義務」には3種類あります。
義務:しなければならない。
配慮義務:配慮しなければならない。
努力義務:努めなければならない。
「義務」を怠ると「義務違反」で、指導・助言・勧告・命令の対象になり、さらに違反を重ねるなど悪質な場合は罰金又は懲役刑までありえます。
平成27年9月改正派遣法であらたに派遣先の義務となったもので、巷間よく語られている派遣可能期間関連以外では次のようなものがあります。
・正社員の募集情報の提供義務(法第40条の5第1項)
派遣先は、次の派遣労働者に対して、派遣先事業所の「正社員」の募集情報を周知しなければならない。
・対象となる派遣労働者
・同一の「事業所」で1年以上継続して就労している派遣労働者
・有期雇用派遣労働者だけでなく無期雇用の者も対象
・労働者の募集情報の提供義務(法第40条の5第2項)
派遣先は、次の派遣労働者に対して、「正社員に限らず」派遣先事業所の労働者の募集情報を周知しなければならない。
・対象となる派遣労働者(次の3つを全て満たす者)
・有期雇用派遣労働者
・同一の「組織単位」の業務を継続して3年間就労する見込みがある
・派遣元事業主から直接雇用の依頼がある
「努力義務」は、法的拘束力も罰則も無く、どの程度守るかは当事者次第です。ただし、「努力する義務」ですから、「罰則が無いなら努力もしない」というのはいかがなものかと思います。
・優先雇用の努力義務(法第40条の4)
派遣先は、次の3つをすべて満たす場合、当該派遣労働者を遅滞無く雇い入れるよう努めなければならない。
・同一の組織単位に1年以上継続して従事した有期雇用派遣労働者
・派遣元事業主から直接雇用の依頼がある
・派遣終了後にその業務に労働者を雇い入れようとしている
では「配慮義務」とは何でしょうか?
言葉の通り「配慮する義務がある」ということで、義務を履行するために何らかの措置・対応を取る必要があります。
これを怠ると、指導・助言・勧告等の対象にもなりえます。
・福利厚生施設の利用に関する配慮義務(法第40条第3項)
派遣先は、派遣先の労働者が利用する以下の福利厚生施設については、派遣労働者にも利用の機会を与えるように配慮しなければならない。
・対象施設:給食施設・休憩室・更衣室
ということで、
義務>配慮義務>努力義務
ということが、ご理解いただけたでしょうか?
今回の内容について、詳しくは
→労働者派遣事業関係業務取扱要領 第8 P238~
(要領の改訂によりページ数は前後する場合があります)
★参考までに、こちらもどうぞ
●労働者派遣法、政令?省令?指針?
https://www.trust-family.co.jp/wgs/blog/v/295/